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2010.9. 6.Mon

接待の暑い夏

秘蔵の作家展が終わり、今週より荒川由貴展が始まった。
33点もありすごい数の作品群だ。

やっと九月になるが,まだ暑い。
今年は暑いので、とても辛い。
暑さのせいでか、コンパスはお休みしてしまった。
頑張って書かねばと思うと書けなくなるから,気ままにスケッチのつもりで書こう。(と自分で言い聞かせる)

夏休みのイベントの最後は、佐久市立近代美術館に荒井裕太郎の彫刻が収蔵されたので、その収蔵作品展に新美術新聞の油井社長さんはじめ編集者の方とともにご招待なるかたちでおうかがいしたことだ。

今年、新たに収蔵された作家さんとそのギャラリー関係者や編集者の方々と長野の佐久市へ小旅行気分で行ったのだが、美術館で作品を鑑賞したあと、鯉料理を料亭でいただき,軽くビールも入る
昼からほろ酔い加減だが、手みやげには美術館からも地元の銘菓が配られる。
手作りまんじゅうもいただく。
至れり尽くせりのすごい接待に驚きながら、ローカルならではの心温かいもてなしにぐっときた。

夕方には到着したので,ワンピースクラブのコレクション展にも行く。
私のコレクションも片隅に参加させていただいた。

しかし、同じ芸術作品とは言いながら,同時代を生きる人々のそのコレクションの好みの違いに愕然とする。

美楽舎のコレクション展は本当に変なものがあり,好奇心をそそり、実におもしろい。
ワンピースクラブの作品は、今、最新トレンドの作品が多く、それはそれでおもしろい。

まだまだ刺激的なアート界である。

ワンピースクラブの会場はメグミオギタギャラリーだったので、近くの鰻屋で鰻を食べる

そのあと、マイナス2℃のスーパードライを飲みにラフィナートホテルのビアホールへ。
全品、ワンコインだが,一杯しか飲めない。
冷たすぎるのか。満足するのか。

最後の幸せな夏の夜でした。

2010.9. 7.Tue

秘蔵の作家さんから

先週は秘蔵の作家展だった。
未知数ながら、隠れた才能を世に出す喜びは大きい。
まだ在学中の作家さんらも大作を持ち込み、その圧倒的な大きさと熱情のこもった作品にますます暑くなるような熱気が会場にあった。

初日には,大いに盛り上がり、夜通しで語りたくなるような話題もあったが、やや衰えを感じ始めた肉体をいたわるように、さっさと家路に着いた。

昔は自分から作家を誘って飲みに連れていったが、この頃はそんな元気はない。
お店に行くくらいなら,画廊に食べ物や飲み物を用意してあげた方が楽だし、楽しいのでは?と思うので、月曜日と金曜日は、そんな感じになっているから、自然と作家さん同士はお酒の力も借りて、とても仲良くなっている。

今回も搬出が終わったら、打ち上げをしていたみたいだ。いいことだなあ。
先週の作家さんに以下のようなメールをもらいました。うれしいなあ。

まず一人目から、

先週の展示は、大変お世話になりました。
同世代の作家とも知り合うことが出来、強い刺激になりました。
今後とも、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

次に以下のようなメールが、うれしいなあ。

こちらこそ、よい機会を設けてくださりありがとうございました。
とても意義のある展示でした。

自分の作品の良い部分を指摘してくださった事も、今後に繋がる励みにもなりました。

岡崎さんを見てとても強いエネルギーを感じましたし、
たった一人で、ここまで経営して行く事にも凄みを感じました。

今後の羅針盤の展示も、非常に楽しみにしています。
ご縁あっての事なので、今後とも関わっていけたらと思っています。

また、是非お会いしましょう。

以上のような言葉をいただくと、この仕事がどんなに私を成長させてくれるかということに気がつく。

作家さんのために、私の出来る仕事があるので、使命感を持って、もうひと頑張りしなくてはと思いました。
目標と夢があれば、困難は乗り越えられます。

辛くなったら,羅針盤に集まりましょう。

酒盛りして元気になりましょう。

2010.9. 9.Thu

強い意志を持ったまなざし

今日は天気も悪く、どしゃぶりのため、午前中は全くといっていいほど人は来なかった。
しかし、午後から夕方にかけて,評論家や美術館関係者の方にお出でいただき、貴重な話が聞けた。
個展では作品販売ばかりが重要なのではなく、やはり、ジャーナリストにも関心をもってもらい、マスコミに取り上げてもらうことも大事だろう。
荒川さんの絵は、ほとんどが女性の顔だが,意志の強さがその表情やまなざしに表現されている。ボデイがそれに比べると弱いためによりいっそう、女性の存在感が強調されている。
背景は、ぼんやりとした木々や森、見え隠れするこどもの豆粒ほどのシルエットくらいだ。それは、日常の世界ではない。
彼女の絵に登場する子供達は、森からこちらを見てはいるが、足だけが描かれていたりするため,ややおそろしげでもあり、子供の無垢なかわいらしさとはムードの違うものだ。それは子供の持つ本質を描きたいという彼女自身の強いまなざしなのである。
個人的には、体操着を着た子供達がヤギと一緒に大きく回転してゆく100号の大作が一番好き。
あとは、桜の木の下で、かくれんぼする子供の絵も好き。
ふと、高校時代に読みふけった萩原朔太郎の草の上で遊ぶ猥雑な詩を思い出した。
思い出すはずのない詩のはずだが、どうしてだろう。
記憶の連鎖とは不思議なものだ。
子供が森で遊ぶ時、そこには大人の見えない魔女が悪魔の笛を吹いているだろう。
ある日突然、町から子供が消えたドイツの古い町の伝説のように。

2010.9. 9.Thu

だからいいんじゃない

東北画の案内状をたくさん持って,あるがあくさんがいらした。彼女は東北芸術工科大の4年生で,今奥野ビルの銀座フォレストというギャラリーで版画の個展を開催中だ。ドットのミニマルな作品で木版とシルクで作成し,仕上がりは,金属の風合いで,私好みの作品だ。羅針盤の4月のグループ展でも、いい作品を発表したが,今回の新作もとても完成度が上がっていた。
『そうだ。せっかく,東北から来たのだから,こういう形で宣伝してあげねば。
皆さん、行ってあげてください。』と。
「コユさんに逢うと緊張します」というので,どうしてかと聞くと「見透かされている気がするから」とあくちゃんは答える。しかし、由貴ちゃんは、「だからいいんじゃない」という。
私に云わせると,作家さんの方が怖いのである。
野生の勘によって、見抜かれるのはこちら側であろうから。

2010.9.18.Sat

種まき

足立正平展がすばらしいです。
友人の一人からこんな嬉しいメールがありました。
それに答えて私からの返信メールです。
岡崎様
こんにちは
昨晩はありがとうございました。
気候も秋と夏を行き来するようで、なんとも落ち着きませんね。
我々の世代も段々とアイディアが実り、仕事が増える一方で、
真に芸術家を志すための工夫も必要になって参りました。
画業とは何とも行きつ戻りつしているようで、いつでも足踏みばかりと数ミリも進んでない様子に聊か焦りの様な感覚を覚えますが、
「我がやどに、韓藍(からあい)蒔(ま)き生(お)ほし、枯れぬれど、懲りずてまたも、蒔かむとぞ思ふ(山部赤人)」
の和歌の様に、懲りずにまた絵を描くことで自然に次が咲くのだなと、それを信じて筆を取り続ける日々でございます。
そんなことを考えつつ、羅針盤で作品を観たり、皆さんとお話したり、こゆさんとお酒を酌み交わす(笑)と、とても元気になります!
先日ご一緒した方に
「なぜ羅針盤は人が集まるのか?」と聞かれた際に、
「そこに鮮やかな彩があるから!」と説明をいたしました。
これこそ展示の、画廊の醍醐味のように感じます。
例によっていろいろと長くなりましたが、今日は少し涼しいのでお許しください(笑)

それではまたと思います。
時節柄お身体ご自愛ください。

PS:和歌の解説:
私の家の庭に、韓藍(からあい=鶏頭の花)の種をまいて育てているうちに、いつしか枯れてしまったけれど、懲りずにまた、種をまこうと思う。

先日、友人からもらったハゼの盆栽を見事に枯らしてしまいました→あっという間に紅葉したのでどうもおかしいなと思ったのでございます(笑)


返信メール

本日、白い虹の書は、残念ですが、他の方のところにお嫁入りしました。
さて、足立さんの中国の友人の話などがたいへんおもしろいので、時間がたつのが
わからなくなり、本日も夜は10時過ぎとなりました。
「僕のためにも宣伝などしなくてはならないので、今週もたいへん忙しいらしい」と嬉しそうな様子でした。
いつもありがとうございます。
懲りずてまたも、蒔かむとぞ思ふ
大事ですねえ。
枯れてしまったかのような作家さんにがっかりしないで、これからも種まきはしようとおもう。
どこから,芽が出てくるかわからないから、、、、、
怒られそうな解釈ですねえ。

練馬区美術館の野地さんは、文人たる足立さんに大変興味を示しつつ、漢詩も
さらりと読みつつ、詩人の生涯にも詳しいので、尊敬しました。
祖父が漢文の先生で,幼稚園時代から,暗記させられたから、というのでした。

昨日、水木しげるの「人生をいじくり回してはいけない」というエッセイを読みました。
その中に
「自分の好きなことをやる。そのために人は生まれて来たのだと私は思っています。やりがいだとか、
充実感といった言葉をよく耳にしますが、結局は自分が好きなことしか、そういうものは見つからないような気がします。」
とあり、
やはり,絵描きさんはなにより絵を描くのが好きだから,描くんだろうと想像しました。
絵を描くために生まれて来たから,描く。それが幸せに繋がると。
さらに
「人生にはいろんなことが起こって当り前。それらに一喜一憂するのではなく,放っておくことです。
人生をへたにいじくり回したところで、何の解決にもなりません。」

足立くんの引用した李賀の漢詩に、蜘蛛の糸がちぎれてしまいそうだ。それはわたしかもしれないし、あなたかもしれない、と本人なりの解釈をつけてくれました。
人生をいじくりまわさないで、ちぎれそうな蜘蛛の糸のように生きよう、カボソイ生命しかないけれど、と。

か細い私ですが、羅針盤には「そこに鮮やかな彩があるから!」というお褒めのお言葉に気がよくなり、調子づいて、むやみに長くなってしまいました。
涼しいからではありません。
またのお越しをお待ちします。

アートスペース羅針盤
岡崎こゆ

2010.9.19.Sun

注射します。

作家さんからこんなメールをもらいました。
うるうる,,,,感激です。


「コンパス通信で、売る側の作家の気持ちとはどんなものなのか?とかいてらっしゃいましたが、私はこうでした。


私のような無名の者の作品を何万円も出して買っていただけるなんて、信じられないことで言葉にできないほど嬉しい。今はまだまだだけど、あと10年、20年たったら、もっと価値のあるものになるように、私はがんばります!と。
けれどもやはり、これで最後の別れかもしれない、と思うと、里子に出す親のような、とてもせつない気持ちで涙がでました。

なんという、気持ちの上り下りでしょうか、これほどまでに嬉しく、でも哀しい気持ちになる、気持ちの揺れに私は動揺しています。

でも、確かなことは、応援いただいた皆様のお気持ちに答えたいということ、どんなに忙しくても必ずかけつけてみにきてくださる先生がいること、それは描き続けていこう、という意志に後押ししてくれたことに間違いありません。

これからも迷い、もがき、苦しみ、時には歓喜し、ということはいくらでも想定できますが、でもいつか、私の思い描く世界を、私の頭の中で鳴り響く交響曲を画面に遺したいと思います。

岡崎さんにはお世話になりっぱなしで、とっても感謝しております。とても温かい気持ちでいっぱいになることができ、一週間のあいだに心の栄養剤を注射していただきました。」


いやいや、実際に私みたいなものが、心の栄養剤を注射していたのかどうか,心もとないが、おもしろい表現だなあと思いました。

でも、注射してもらいたい方,注射しますよ。
効くかどうか分からないけど。

2010.9.19.Sun

文人

足立正平さんは、幼少時から書をたしなみ、漢詩も読みこなせるなど大変教養あふれる作家である。
近年、若人にまれに見る文人である。
私事になるが、前衛書の稲村雲洞という書家についていたことが、なぜか骨董美術に目をひらくきっかけになったことは、間違いがない。
目習いこそ,君に必要なことだと師はいう。
いい作品を見ることのできる眼を養えと、そのために本物を見、さらに借金してでも、「いい作品を購入して毎日眺めよ」とのたもうた。
おかげで,全くおしゃれとは無縁の今の自分が出来上がった。
そのメッセージの教えが、これほどに人生を変えるとはその時は思わなかったが、身銭を切って購入し、さらにその作品と一緒に住みながら、その作品を飽くまで眺めることによってしか、見えて来ない実感というものは確かにある。
物事が分かるということは、頭で理解することとは本質的に違うのである。
分かるということは、己の人生を変えるくらいでなければ、わかったことにはならないのであろう。
こうも云える。
もし、作家が何かを理解したなら、作品は大きく変化せざるを得ないのではないか?
人生の水先案内人の役割をしてくれるくらいの哲学者のような賢人の作家にもそろそろ出会いたい。
そういう時におすすめなのが、足立正平なのである。

2010.9.23.Thu

ぶたの貯金箱とくじら

今週はいかねばならない展覧会がたくさんあるが、どうしても全部は行けないだろう。
まずはお気に入りの馬籠伸郎の個展へ行く。近くのツープラスというギャラリーへ行くと、作家のしんろうくんはいない。
しんろうくんのイメージは、紫という感じで紫芋のタルトと沖縄の紫の大きなドラゴンフルーツをお祝いに持っていった。
ふと、二階の階段の踊り場に見慣れぬピンクの豚の貯金箱が。。。。
その上には,サポーターになってくださいとある。
お菓子では何の足しにもなりません。感動したら、100円でも1000円でもいれてサポーターになってください。とあり、そのお金は全部作家さんに渡しますとあった。
それで、そっと札を折っていれたが、つまってしまった。
で、本人が来た時に大きな豚にした方がいいよと助言した。
でも、考えたなあ。いいことだなあ。
すこしでも,現金の方がいいものね。
会期中は交通費だってかかるし、外食代だってばかにならない。
今日は、足立正平くんと湘南くじら館へ行った。
初めての訪問。
画廊から約、車で二時間半。
ちょっとしたドライブだった。
入り口におもしろい人形が飾ってある。
目玉が飛び出していて、歯が剥き出しの得体の知れない怪物君のお出迎えだ。
外観はかわいらしい3階建ての建物で、3階には、冷蔵庫、テレビ、バス、トイレ付き、さらに調理器具もすべてそろっていてのゲストルームがあり、作家さんに500円でお貸ししていると言う。
最高だ。
窓から差し込む明るい光、吹き抜けのあか抜けたスペースにかみかわちあきさんというギリシャのキプロス在住の作家さんのオブジェやパッチワーク的作品やドローイングの数数がセンスよく配置されていた。
展示にとても慣れているベテラン作家の雰囲気があったが、オランダの美術館には所蔵されているものの日本では、初個展らしい。
この遠方の画廊は、これからも次々に大変興味深い展覧会を企画していて、眼が離せない。
おすすめの隠れ家的な画廊だ。みんなに教えてあげたいし、ツワーを組んでお出掛けしたい。
居心地のいい空間にいるとずっといたくなるなあ。
三時間もいてしまった。
長居してすみません。

以下、住所とホームページアドレスです。
湘南くじら館
[スペースkujira]252-0802
神奈川県藤沢市高倉668-12
0466-47-2946
www.shonanfujisawa.com/~kujira/

湘南はやや遠いのですが、行って損はありません。
お土産も充実してます。カエルの張り付いた携帯入れを何と1350円で買いました。安い。安すぎると思いながら、カエルを二匹連れて帰りました。

 


   

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