« 注射します。 | | ぶたの貯金箱とくじら »

文人

足立正平さんは、幼少時から書をたしなみ、漢詩も読みこなせるなど大変教養あふれる作家である。
近年、若人にまれに見る文人である。
私事になるが、前衛書の稲村雲洞という書家についていたことが、なぜか骨董美術に目をひらくきっかけになったことは、間違いがない。
目習いこそ,君に必要なことだと師はいう。
いい作品を見ることのできる眼を養えと、そのために本物を見、さらに借金してでも、「いい作品を購入して毎日眺めよ」とのたもうた。
おかげで,全くおしゃれとは無縁の今の自分が出来上がった。
そのメッセージの教えが、これほどに人生を変えるとはその時は思わなかったが、身銭を切って購入し、さらにその作品と一緒に住みながら、その作品を飽くまで眺めることによってしか、見えて来ない実感というものは確かにある。
物事が分かるということは、頭で理解することとは本質的に違うのである。
分かるということは、己の人生を変えるくらいでなければ、わかったことにはならないのであろう。
こうも云える。
もし、作家が何かを理解したなら、作品は大きく変化せざるを得ないのではないか?
人生の水先案内人の役割をしてくれるくらいの哲学者のような賢人の作家にもそろそろ出会いたい。
そういう時におすすめなのが、足立正平なのである。

 


  〒104-0031 東京都 中央区 京橋 3-5-3 京栄ビル2F
TEL&FAX 03-3538-0160

E-mail info@rashin.net