昼間だっただろうか、汗だくになりながらベッドのモチーフを撮影していた。
するとベッドの上に猫がのってきて、こちら側をじっと見つめている。
この絵は何年か前に撮った写真をもとに制作している。
去年の末だっただろうか、何を描こうか迷っていた時期に、ふと
昔の資料を探っていたところ、一枚の写真に目がとまった。
それはとても懐かしく、僕の方を一点だけ見つめるその猫の姿は
もうすでにベッドだけではないひとつの何かを象徴するような
モチーフにしあがっていた。
当時、何故これを描かなかったかは思い出せないが、今回の個展のなか
でとても重要な絵になったと今は思う。
他にもいくつか紹介したかった絵はいくつかあるが、椅子、皿、ベッド。
日常の中にひそむ空気感、それらは常に何かを物語っている。
ふとした瞬間に見る少し抽象的な形をしたモチーフの発見であったり、誰かが
いなくなった後、不在だけを物語るもの、
そういった空気感を描くことを目的としてきた今、この展覧会で現れる自分
が何なのかこの絵の中の猫のように自分自身を見つめてみたい。
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