塗り残しの余白〈現在進行形〉
芸術は、限りなく〈既存のものを転覆させ、反対の地平を広める作業〉であった。
作品の完成度は且置し、〈キャンバス〉の表面全体が塗り残しのみでなり立った時、画面は余裕よりも一種の心理的な圧迫感を与えるようであった。
過去の幾年間で満たす作業を持続してきたが、塗り残しから始まる空間を通して完全な自由を感じることが出来なかった。それが逆に余白の両域として大きく近付いくいてきた。
我々は、或る対象を眺める時、空間及び背景や周辺環境と共に、対象を取り囲む関係を通して対象の実体をより深く理解することになる。余白とは、視覚的には空いているが、空間的にはこの関係性を多分に内包する密度の在る考察なのである。
従って、作品〈キャンパス〉を完全に塗り残すことによって、余白の空間を形成し、これを通して完全な自由と余白を同一化しようとした。
内容的側面
現代人の実存〈現在進行形〉
〈現在進行形〉は、一言でいえば現代人が生きて行く際の我々の営みの姿に対する自画像である。
速い速度で変貌して行く現代人とは、先端機器と物質文明への追従による発展の裏面に、孤独感、孤立と自己破壊を招来する。
グロテスクな群像達の自画像を通して文明の利器の中で失われてしまった感性を引き出して見たかった。
物質文明を追従する過程で、自らを対象化させる現代人の実存は、墜落の危機の中でも、相変わらず現在進行形である。 |