TOMOKI KANEKO EXHIBITION

金子 朋樹 展

「アクシス・ムンディ–等価・統合– 」


2015.10.26.Mon.〜10.31.Sat.

11:00〜19:00

※最終日17:00まで

◇ギャラリートーク
2015年10月30日(金) 16:00〜17:30
ゲスト 立島惠(佐藤美術館学芸員)


website
http://kaneko-tomoki.com/




金子 朋樹 Tomoki Kaneko 


画家。東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師。個展、グループ展ほか、作家グループ運営、講演、ワークショップなどの制作外活動も行う。静岡県御殿場市在住。

[略歴]
1976年 静岡県御殿場市に生まれる
2004年 公益財団法人佐藤国際文化育英財団 第14期奨学生
2006年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画研究領域修了 学位取得
2010年 「ガロン 第1回展」(主催/ガロン実行委員会、助成/公益財団法人 野村財団、協力/瑞聖寺、公益財団法人佐藤国際文化育英財団・佐藤美術館)、瑞聖寺、東京
2012年 「ガロン 第2回展 『日本背景』」(主催/川口市、ガロン実行委員会、後援/川口市教育委員会、公益財団法人佐藤国際文化育英財団・佐藤美術館、認定/企業メセナ協議会)、旧田中家住宅、埼玉

[個展]
2003年  アートスペース羅針盤、東京
2005年 「内包するフォルム」、銀座スルガ台画廊、東京
2006年 「回帰する絵画」、銀座東和ギャラリー、東京
2008年 「emergence/羽化」、ギャラリーQ、東京
2009年 「Recurrence東京⇌御殿場 −滲透する弧状の膜−」、ギャラリーQ、東京
2010年 「Axis −世界軸−」 、ギャラリーQ、東京
2013年 「鏡花水月」、ギャラリー広岡美術、東京
2013年 「飛天」、東京九段 耀画廊、東京


場所性を重視する自己にとって、静岡と山形の反復運動はさらに重要な意味を持つようになった。一見引き裂かれた様相を呈しているが、共に山岳信仰の地にある不変の自然観に想いを馳せざるを得ない。反面、圧倒的に情報が開かれている昨今、果てし無い科学の増幅と人類の向かう先に私の興味は尽きない。科学のもとに生まれた人工物はよりマッスを伴って内燃機関を向上し、時間と空間を拡張していく。重力に抵抗し、時として危険を誘発する物体さえも存在する。

けれど自然生命もまた偉大な光学装置を持つダイナミズムだ。これらの有機体と無機体の狭間で、私たちは自然生命といかに関わっていくのか?科学といかに関わっていくのか?その狭間をいかにして生きていくのか? これらの「あいだ」を揺らぐ問いと共に、私は「現在」の在りようを刻みたい。反復運動から俯瞰することで浮かび上がってくる不変と可変、陰と陽、正と負、そしてハレとケ…。これらの等価・統合された世界を焼き付けることは可能だろうか。

― アクシス・ムンディ。世界軸とは人類に刻まれたシンボリズムの概念だ。それは私にとって全てを受け入れる器であり、世界の起源である。
金子 朋樹

「ホームページ]
URL   http://kaneko-tomoki.com/
MAIL  tomoki-k@rx.tnc.ne.jp



金子朋樹の個展に寄せて

金子朋樹はどういう画家か? 本展でわたしたちは、機械のエンジンやダクト、さらには小惑星探査機はやぶさといった人工物と動植物のモチーフが、水や風の流れを想起させる下地の同一平面上に描かれているさまを見ることになる。

静岡県御殿場市に生まれ育った金子朋樹(一九七六年生まれ)は、同地に陸軍自衛隊演習場があったことが大きく影響して、東京藝術大学で日本画を学んだ在学中から、ヘリコプターを重要なモチーフとして長く描いていた。ひとがその機体からロープで降下するさまや、ヘルメットをかぶった自衛隊員らしき肖像の作品もある。写実的にというよりもシルエットとして記号的に描かれたそれらのイメージは、しかし、生来身近な環境で積み上げられたヘリコプターの視覚体験が幾重にも瞼に焼き付けられ、純化された結果生まれたもののように見える。金子は機械そのものへの好奇心を語るが、彼にとってヘリコプターを描くことは、わたしは何者かと自身の原風景を深く見つめることと同義だったに違いない。

ヘリコプターと同時に、きわめて近しい存在であったのが、金子が学んだ「日本画」の代表的な画題でもある富士山である。近現代では横山大観や片岡球子をはじめとして、それ以前も信仰の対象として長く絵画化されてきた富士山を、金子は幼少期から見つめてきた。それは、三角の形態によってほとんど記号化された富士山ではなく、活火山として今なお噴火の可能性がある、生きた山としての、すさまじいエネルギーをそのうちに有した富士山である。したがって金子の描く富士山は、誰もがそうだと認識するかたちをとっておらず、一見富士山には見えない。けれども、だからこそ、それは金子が御殿場市で生まれたからこその絵になっている。

こうして金子は、自身の生まれ育った土地における自衛隊と富士山を、自身の絵画の主題として重視してきた。彼の言葉を借りれば、それは防衛と信仰という、御殿場市における風土のなかでの二項対立である。だがそれは、広義にはナショナリズムにも捉えられかねない画題にほかならない。わたし自身、金子がそのあたりについてどう考えているのか、作品を見ながらもはかりかねていない部分があったことを告白する必要があるだろう。が、金子は、それらの画面の表面を水面に見立て、青くフィルターをかけるかのような処理をすることで、自身とそれらに対する一般的な目に対する距離や断絶をあらわそうと試みていた。

とはいえ自身のルーツへの強い思い入れは、作品として、自己模倣に陥る危険をはらんでいた。変化をもたらしたのは、二〇一五年四月、東北芸術工科大学美術科日本画コース専任講師として赴任した山形の環境である。美術予備校や大学での講師を兼任、多忙をきわめていたここ数年の東京での生活を経て、はるか北上した東北での新しい暮らしは、未知の文化の見聞と、制作に集中できるまとまった時間を金子に与えた。生地の象徴としてのヘリコプターや富士山はむしろ息を潜め、さまざまな人工物が動植物と組み合わせられ、画面を形作るようになるのは、住まいを移した今春以降のことである。

今回はじめて四作品が展示される同一サイズの作品群は、あわせて全三十作品を予定したシリーズとして構想されている。作品点数と多種多様なモチーフという内容は、ある画家の作品から着想を得ており、それだけにこだわるものでもないためここでは明らかにしないが、日本絵画の古典からの研究を踏まえて金子が行おうとしているのは、ありていに言えば自然物と人工物の混淆による新たな花鳥風月の創出ということになるだろうか。だがそれがただの図案的折衷であれば描かれる理由はない。

作品の制作背景にあるのは、本展で掲げられている「axis mundi」=「世界軸」の概念である。それは世界の中心、天と地を結ぶシンボルであり、自然物では山や樹木、人工物では塔や階段、杖などの上方への移動を象徴する存在によって世界各地の異なる文化圏であらわされてきたという。ヘリコプターや富士山に金子が象徴させていたのも、実はこの概念であった。すなわち金子が本展出品作で描いているエンジンやダクト、蒸気機関車といったモチーフも、あちらとこちらを結ぶ動力としてあらわされている。

したがってこれらの作品は、ただ自然物と人工物の組み合わせの妙に注目すべきものではない。金子がそれらの結合をとおしていかに世界を見透そうとしているか、その哲学こそが重要なのである。そう、自衛隊や富士山というナショナルなモチーフを有する場所から、東北というそれだけには決して落とし込めない場所への転換による、新しい世界観の構築だ。絵画が画家による未知の世界像の発見であるならば、新たな場所に立った金子朋樹が、世界をどう捉えはじめているのか? 二年ぶりとなる今回の個展でそれが明らかになることを期待している。
                                小金沢智(日本近現代美術史)



 


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