中風 明世 展

2012.8.27.Mon.〜9. 1.Sat.

11:00〜19:00

※最終日17:00まで





「第17回 中風明世展によせて」

 中風明世は2度死んだ。
一度目は刑事として殉職し、盛大な告別式をあげてもらった。
二度目はインチキ画家として、奥多摩の見知らぬ橋から腐敗死体となってロープでぶら下げられた。
というのも、友人の高名(らしい)脚本家H氏の作ったドラマの出演者(脇役)にぼくの名前を貸したというか、使ってもらったからだ。
インチキ画家の巻など、H氏は、銀座の個展のシーンがあるから中風の本物の絵を置いたらどうかと悪のりし、ぼくに「作品貸して。」と言う。ぼくは胸の奥に小さな不安を感じ、「一度ネット上でいいからぼくの作品をディレクターに見てもらった方が良いよ。」と言うとしばらくして、「悪いけどさー、ディレクターが中風の絵はお茶の間の主婦の人々にはさっぱりわからんから使えないって言ってる。」とのことでした。えーんだよそれで。
つい最近は、「中風明世の作品は、はがき一枚で2000万円もするのか?」と主人公のセリフにさりげなく入れてくれたそうだ。それで少しでもぼくの作品の値段が上がったら、一杯おごらせようとする算段だったが、それも敏腕ディレクターにみつかりあっさりカットされたらしい。
こんな具合でぼくだけではなくH氏の友人連中は被害者として残忍な殺され方をしたり、時には殺す側、犯人になったりする。(あまり主人公はいない。)
ぼくが画家になったのは、高校生の頃、「死」や「宇宙」の想念に酷く取り付かれ、そこから逃れるためだったのに、年々それは重大なモチーフとなり、足腰が崩れ落ちそうなほどの存在の不安感をともなってぼくの前に立ちふさがる。
「人間失格」や「とかとんとん」を書いた太宰治を、「あんたまだ小説にするエネルギーあるやんけ。」と斜めに見て、ぼくのほうがしんどいわ。とうそぶく高校生でした。
とはいえ、この世はディテールが良く出来ていて、身近な人の温かい人情に助けられ感謝したり、大きく元気一杯に咲いたひまわりに感動したりする。コンクリートのヒビから雑草が生え出しているとかに、つい、頑張れーって言ってみたりね。
これはこれで現実やんか。と、「在る」ことの実感を得たりするから難しい。
そんな右往左往しているぼくの展覧会です。よろしくお願いいたします。

中風明世略歴
1982 武蔵野美術大学卒業
1996 モダンアート展、[東京都美術館] 〜2012まで
新人賞、奨励賞、会友佳作賞2回 俊英作家賞受賞
2000 第4回中風明世展[画廊光芳堂、ギャラリーなうふ同時開催]
2002 第36回現代美術選抜展 文化庁主催[北海道立釧路芸術館]
2003 第5回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2005 第6回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2005 第7回中風明世展[北びわこホテルGRAZIE・滋賀長浜]
2006 第8回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2007 第9回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2008 第10回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2009 第11回中風明世展[パスワールド・岐阜]
2009 第12回中風明世展[イナテックギャラリー・愛知県幡豆郡]
2009 第13回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2010 第14回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2011 第15回中風明世展[アートスペース羅針盤・東京京橋]
2011 第16回中風明世展[極小美術館・岐阜池田町] 〜2012
現在 モダンアート協会会員





 


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