コンセプト

私は、物質的な存在に出会うときに強い魅力を感じます。物質的な存在とは、朽ちた 壁であったり、何年も酸化を繰り返した鉄であったり、風化された廃墟であったりしま す。これらの存在に強い魅力を感じる理由は二つあります。 一つは圧倒的な存在感です。朽ちていったもの、風化され削られていったもののよう に、人工的に本来担っていた形が、様々な自然現象によって形を変え、その存在を露わ にしていることです。その存在感はむしろ以前よりも重厚になり、そのもの本来の形 が、実は自然現象によって完成されたものであるとさえ感じます。 二つ目は表層です。物質的な存在にできる表層は作為的にも無作為的にも別の存在に よって形作られ、今ある状態に変容していきます。風化、酸化、自然現象のあらゆるも のが時間の経過によって表層に付着しその存在をより強固のものにしていきます。飽き るほどの永い時間をかけ、形作られた物質的存在は、時間をも取り込み永遠にそこにた たずむかのように見えます。しかし我々の眼に見えないスピードで今もなお自然と共に 変化しているのです。 これらのような自然現象によって変容した物質的存在の形と表層が私の体感と一致 し、作品を作る原動力となっています。その存在自体を自分の中で咀嚼し、レリーフ形 態とドローイングによって自身の痕跡を形作る作品を制作しています。

市川 弘充/Hiromichi Ichikawa

略歴 1986年 茨城県笠間市生まれ
2010年 東北芸術工科大学洋画コース卒業
現在 同大学院修士課程洋画研究領域在籍

主な展示
2007年 グループ展「リバリズム」(悠創舘) 山形
2008年 三人展「遊泳」(GALLERY 絵遊) 山形
2009年 グループ展「新四年生展」(悠創舘) 山形
グループ展「プレ卒展」(大学内教員棟) 山形
個展「instant art」(GALLERY TRIO) 山形
2010年 三人展「perche'」(銀座スルガ台画廊) 東京
2011年 グループ展「あおぞらDEアート@ツープラス」(ギャラリーツープラス)東京 受賞歴
2009年 トーキョーワンダーウォール2009入選 東京都庁
2010年 卒業制作展優秀賞受賞 東北芸術工科大学