「セックスは女」によせて 内田あぐり(武蔵野美術大学教授)
彼女たちの描く作品の背景には、現代を生きる女性の冷徹なまでの視線が隠されている。
男でもなく女でもなく、一人の制作者として自身の世界を探求する姿がそこにはある。
描かれたそれぞれの女性像は硬質でありながらやわらかく、しなやかな感性のなかに狂気が垣間見える。
中野めぐみが描く顔は大胆にクロ-ズアップされ、者クロムで粒子の粗い無声映画の断片を見るようだ。
佐野淳子は空間の中に女性を構成し、その存在と関係性を問う。どこか舞台のプロロ-グを思わせるような画面である。
蜂屋未来は撓む布に沁み込ませるように人間を描く。また布を縫う行為によって、肉体生と女性性を感じさせる。
彼女たちの感受性溢れる世界を、多くの方々に見て頂きたいと思う。そして彼女たちの絵画と未来を、わたしは心から期待している。
彼女の肉体のなかで 世界は現れては隠れる
ぼくの眼を見る一つの形が そしてぼくの触覚が
一つの肉体よりも多くの 過剰な存在を消散させる
一人の女性は一つの疑問であり そして 一つの答えである
(オクタビオ ・バス 「レオン・フェリペへの手紙」)
続オクタビオ ・バス詩集 真部博章訳 土曜美術社 1998年
中野めぐみ
1976年 山口県生まれ
2002年 武蔵野美術大学造形学部日本語学科卒業
蜂屋 未来
1984年 千葉県生まれ
2010年 武蔵野美術大学大学院美術専攻日本画コ-ス修了
佐野 淳子
1985年 京都府生まれ
2008年 武蔵野美術大学造形学部日本語学科卒業 |