神保千絵の展覧会を開催中だ。
真空管の内部を描いた作品だ。
神保さんは女性にしては珍しく、無機的なものが好き。
かわいらしい、その容姿とは、ずれた印象のミニマルな世界を描いてきた。
たとえば、ノルウェーの私書箱など。
初めて見た絵は、メトロノームだったが。
真空管の小さな部品は、彼女を魅了したか?
そこから抽出したもので、自分の世界観をランドスケープするといった手法で、メカニカルな空間と内在する空間をいかに演出するか?
そこに神保千絵の作品の魅力がある。
抽象美術のカンデンスキーは幼い頃からピアノをよくし、パウル,クレーも幼い頃からヴァイオリンをよくし、ベルンのオーケストラで弾くほどだったらしいが、神保さんもクラリネットをするためか、作品も音楽的共感覚的絵画のようだ。
その豊かな抽象造形は、形や色彩や量やマチエールの配置関係によって、まるで音楽を奏でるようなリズムとハーモニーで成り立つ。
曲線と直線で空間を造形しながら、押さえた色使いもいい。
あらゆる芸術は音楽の状態に憧れるといったのは、ショウペンハウエルだが、神保千絵さんの作品は久しぶりに音楽と絵画の共感覚的融合の楽しみを導いてくれるものだった。
恵まれた共感覚を生かしたランドスケープ。
真空管という小さな世界に小人になって、大きな世界でオーケストラを聴いているといった、夢のような劇場に思えてくる。
ぜひ、みなさんにもこの不思議な空間を味わっていただき、見に来ていただき、感想なりをいただきたいと思っています。