“描く”ことの原点を問う
東洋画における墨の可能性とは、絵画表現の根本を問うことに等しい。それは、如何に描くか?ではなく、いま何を描くべきか?を問うことになるからだ。
墨は、東洋画において最も基本的でシンプルな画材。その単純明快なモノトーンが、まずは描くべき動機を刻む。さらに微妙な濃淡や筆致を駆使すること
で、イメージや感動を多様に膨らませていく。墨の真価は、何より描き手の意志に委ねられているのだ。
そんな墨の表現の探究は、自身の内なる思いを、如何に率直かつ的確に自身の外に引き出すことが出来るか。つまり、芸術表現の原点回帰に他ならない。
そして社会全体に閉塞感が増す昨今、尚更、墨への期待が高まる。
藤田一人(美術ジャーナリスト)
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