キャンバスにアクリル絵の具を使い作品を制作しています。
現在描いている作品の多くは白い布を貴重にしたベッド、テーブル、
椅子、服、水の入ったガラスのコップなどのモチーフを多く描いています。
そして青を貴重にした空間で、それらを主に描いています。
作品の多くには白いモチーフが描かれていますが、
白という色はどこか神聖な色であり、
白い布などは歴史のなかで常に象徴的に使われてきたモチーフ
であるのではないかと考えています。
そういった歴史は現在でもいろいろな場面で続いていいるのだと
思っています。
現代において人が白いものを選ぶというとき
それはどこか死や神と繋がっていて、神秘的で浄化されたものを連想させる
ものがあると思うのです。
作品を制作する前にいくつかの小さなラフスケッチをしますが、
一つのイメージ、絵になるということは、繰り返し大まかなイメージを
スケッチブックにいくつも描いている内に、どこかでこれは絵になるというような
予感が働いてくるものだと思っています。
スケッチという行為はそういった予感のようなものを鍛える作業なのだと
考えています。
イメージというものは降りてくるものではなく、つねに描きながら
探し、発見し、生まれてくるものだと考えています。
小さく描いたいくつものラフを見返しながら、一つのイメージになる
と感じるものを選び、
実際にそれに合わせたモチーフを自分自身で作ってみます。
白いベッドカバーや枕を用意し、ベッドを作り、いくつも撮影をしてみます。
そういった作業のなかからイメージは鮮明になり、よりリアルなものになっていきます。
イメージというのは常に頭の中でもやもやとした、とらえどころのない
ものです。それらを現実の世界に転換するという作業はどの絵を描くときも
試行錯誤しながら出口を探し、見付けだすというような作業です。
モチーフをよりリアルに描こうとしたのは近年で、(まだまだ技術が不足している
ところもありますが、)
作品を作る上で大事にしていることのなかで、内面のリアリティーと外側にある
リアリティーの量を常に考えて意識しているところがあります。
生活のなかで感じていることや、頭の中にあるイメージ、(内面に在る)
というリアリティーと
作品をつくる上での明確な存在、つまり自分の内面ではなく
自分と離れた存在すべてのことやものをどれだけ作品に投影するかという
ことをいつも考えています。
その両方の分量で絵の内容は左右されていくものではないかと考えています。
作品のコンセプトの一つとして「何もない空間、空気感」そして「気配」ということが
あります。
人が去った後のベッド、何ものっていないテーブル、椅子、
これらは人の目が見ているものではなく、何もない空間に
意識だけが物の存在を見つめているように思うのです。
何もないということは、そこに残された見えないもの、空気感は
より強調されるものだと思っています。
そこには無意識の空間のようなものが存在しているように思うのです。
人というのは常に固定概念というフィルターを通してものを見ているものだと思います。テーブルをテーブルだと思いながら見ていると、
そのものの存在だけを見ることはできないでしょう。
ものを細部まで長時間布のしわの一つ一つや、皿に写り込んだ光の形などを見ながら絵を描いていると、
それらはベッドや皿と名付けられるものではなくなり、
ものの存在だけが浮き上がって見えてくるようなのです。
固定観念は人に安らぎをもたらしますが、創作へ向かうときはそれらを
できるだけ排除した見方を意識しています。
そうすることで、怖さや不安、どろっとしたぬめりのようなイメージが
奥に浮かび上がってくるように思うのです。
観念の消えた世界というのは不安でどこか恐ろしい世界でもあり、
一方で光や、かすかに感じる気配は対極にある安らぎや
安定感を引き寄せてくれるようです。
不安と安らぎを同時に感じる世界、イメージ
を求めているのだと思います。
毎日キャンバスに向かい続けている生活ですが、
常に自分の絵を進展させようと変化を繰り返しています。 |