そろそろ帰ろうかと帰り支度をしていると、若者とコレクターさんが赤い顔で来廊。
就職斡旋業の会社の重役を務めるコレクターさんは、中国人である若者の就職祝いとうことで飲んでいたらしい。
この大不況で外国人である彼が一流企業に就職出来たことは、素晴らしい快挙に違いない。
さて、作家たるもの就職せず、アルバイトをしながら作家業を行うものと暗黙の間に決まっている。
しかし、今は作家業と生業は両立せねばならない時代が来たように思う。
そんなことは、作家自らが考えることなのだが、そうもいってはいられないだろう。
受けた恩は石に刻み、与えた恩は水に流すんだよと教えてもらったのだが、犠牲を払って人に親切にすることは、大変難しく、それは日々努力してこそ、身に付くものと思われるが、先週個展を開催していた彼女は、努力ともなく、何のためらいもなく、惜しみなく、親切に面倒なことも喜んで引き受けてくれるので、びっくりしたものだった。
押し付けがましくなく、私のように努力するでもなく、それが自然というもので、何とも感心するばかりだった。いくらほめてもほめきれないほど、人間が出来ているなと思わせる素敵な女性だった。