私の教員生活最後の教え子に万葉オタクがいた。
おたくもいろいろだが、艦船オタク、美術オタク、などなどオタクを相手に商売をしてきたが、高校生の万葉オタクは,今はなんと大学の講師なのである。英文科に進み、ランボーが専門だ。
私ことコユ先生にはジルドルージュの翻訳本をプレゼントしてくれた。
学習塾の先生と大学で英文学を講義しながら、生計を立てている。その知的ながらもあどけなかった万葉オタクの教え子も昨年結婚した。
ふたりの台所に飾る絵に田村正樹の絵が選ばれた時、その絵が象徴するものは何だろうかと考えた。
二人の台所にはあたたかな空気が流れているのだろうと思った。
平和そのもののようなやさしい空気。話さなくても、阿吽の呼吸で分かり合える程よい距離感。
田村正樹の絵には、そういう人と人が寄り添ってちょうどいい距離感というものの心地よさがあるのだろう。