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顕微鏡

とても腰の低く、丁寧な絵の見方をなさる方で、毎週いらっしゃる紳士のお方が、神保千絵さんの作品をたいへん気に入ったらしい。
しかも、顕微鏡をプレゼントしてくださると言う。
それがもう、レトロな木箱に入っていて、もちろん,鍵がかかっている。
お車で運んでいただいたが、当のご本人も鍵を持ってして開けることが出来ない。
昨日の夜から今日の朝まで中身の顕微鏡が気になって、鍵穴を何十回も回してみるが、すごい錆のためか、全く開かない。
昨日の夜は,そのせいで,帰宅が大変遅くなり、真夜中になるとこだった。
今日の朝もやってみたが,だめだ。
大空襲の際に、この箱だけもって逃げ回ったという形見のような代物だ。
ただの顕微鏡ではないな、とにらんだ私は、神保さんが自宅に持ち帰るまでは、何としても、中を見たかったのである。
何とも開かない箱を睨んでる時に、高級メロンをぶら下げてのカメラマンがいらした。
メロンも魅力だが、ともかく、箱の中身が問題だ。
この人はきっと開けてくれるはずと直感。
開けて。。。。という間もなく、開きましたよ、となんの困難もなくいうので、拍子抜けした。
そこにあった顕微鏡は、家一軒の価値のあるドイツの高級な顕微鏡で、毛髪の内部まで見える。
慶応の小児科のお医者さま(私のおじさまと同じだあ。小児科の先生らしく,お優しそうでした。親しみが湧きます。)で4代目という方だからこそ、この顕微鏡を大事にされたというわけだった。
メカニカルな空間を描く神保さんにプレゼントしてくださったお医者さまは、午後、またおいでになり
開きましたか?といって、嬉しそうに顕微鏡の中をのぞいていらした。

 


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