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熱狂的なあまりに

人がなんと云おうと好きなものは好き。
他の人がどう評価しようとあくまでも自分の趣味を持ち込むこと。
売れるとか、評判がいいとか、そんな他人の評価や経済的なことなど、おかまいなしでいい。
そんな企画をやることは、画廊経営者にとっての生き甲斐である。
自分にこれほど共感出来、寄り添うような作品に出会ってしまったからには、それはもう、単なる熱病としかいいようのないものだ。
そんな熱狂的な展覧会を開催することが、自分への最大のご褒美。
学校を卒業する時、入学する時、いつも見上げる空。
そして、新しい校舎の壁。ひび割れた壁やしみ。
校舎と校舎の隙間からのぞく青い空に怯えながら、新しい環境に入っていく時のときめきと緊張感。
私のやや神経症的な気分は、どこまでも青い空へと続く。
そんな新しい環境に慣れるまでの緊張とときめきを同時に感じさせてくれる作品に出会った。
それが中風明世の作品だ。
雷を浴びたように感じるものがあった。
運命の作家に出会ったと思った。
色を強烈に感じる作家、それが中風明世だ。
暑い夏の日に強烈な太陽の光を浴びるようだ。
身体に刺さるような強烈な光。
アルコールに浸したナイフにさされて死にたいと思っていた思春期の欲望を刺激するかのような作品群だ。
銀のナイフのようなジップは、上から垂直におりてくる。
バーネット・ニューマンに似てるだとか、似てないだとか、そんな議論もあった。
しかし、私にとって彼の作品は、欲望を刺激し、エロスとタナトスを同時に体感させてくれる絵画だ。
マリファナもお酒も薬もいらない。
いい絵画には、テンションをあげるだけのイリュージョンがある。

 


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