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原稿募集中

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こゆ先生

田村さんの感想書きました〜☆ 先生が「万葉オタク」って言うから、ちゃんとそれを発揮してみたよ(笑) 誤字脱字がありましたら、ごめんなさい。以下、本文です。

ではでは☆ にーなより

山影を追って――『田村正樹展』感想
藤井仁奈

田村正樹さんの作品に出会ったのは、数年前の秋のことだ。彼は、持ち歩いていた鞄から、一枚の白い美しい絵画を取り出し、羅針盤のスタッフルームで拡げてくれた。一瞬にして私は、頭の中の世界を占領されてしまったのだ。春の霞がかったような、真っ白な光の世界。
 以来、田村正樹の東京で行われる個展を、私は数回にわたり見てきた。そこにはいつも白の中に浮かぶ山影のような焦げ茶とも黒とも表現しがたい心の闇のような存在を感じていた。
 今回のアートスペース羅針盤での個展では、ひときわ眼を惹いたのが「Genesis」だ。羅針盤の岡崎こゆ氏も、〈格闘する絵〉とブログで述べられていたが、その〈気概〉は確かに作品の中に存在していた。七転八倒しながら、苦闘の末に完成させた白くはない世界。むしろ、黒と焦げ茶の、破壊と再生の物語。ひょっとしたら、その物語のなかで、〈格闘〉の末に白の世界を破壊して、新たな天へと湧き立つ黒い山の物語を再生させたのかしら……。
 「Genesis」をゆうに半時間以上鑑賞したあと、再び眼を惹いたのは、やはり白の「韻」という作品だった。画面いっぱいに拡がっているのは、美しい品のある白の世界だった。作家は言った。「ある本の中に『気韻』という言葉があって、その文で使われていた『気韻』の意味と作品のイメージが重なった」と。つまり、〈気韻〉の白。それはまさに作家のこころの表裏を垣間見た瞬間だった。苦闘の黒と、品の白。予期せず、作家の内面の深さを感じてしまう。
 羅針盤のスペースを一周する私が、最後に惹かれたのは、「湧」。作家の基本的なモチーフとも呼べる「山影」のアルカイックな雰囲気が、そこには現れていた。それを見て安心感を覚えたのは、多分それが作家の心の奥底にある遠い記憶の、あるいはもしかすると日本人の記憶に脈々と受け継がれてきた原風景だからなのだろう。
田村正樹の絵画は、抽象でありながらも叙景詩のような感覚を鑑賞者の中に引き起こす。そういえば、こんな歌を思い出す――〈三輪山を しかも隠すか 雲だにも 心あらなも 隠さふべしや〉。

 


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